国際通りへ
カーテンをゆっくり開けた。新都心の真新しい街が窓いっぱいに広がっていた。一日前の光景とは雲泥の差。
朝なのに日差しが昼のように強烈。旅行最終日でなければ、
外に出るのをためらうのだが、そうも言っていられない。早々に荷物をまめて、チェックアウト。今日は時間が許す限り、国際通り周辺を散策する予定。
国内で唯一沖縄にだけある路面型DFSギャラリアの前を素通り。海外ならDFSにも寄るところだが、今回は免税品より国際通り。天秤にかけるまでもない。湿度の高さが画像からもわかる。
不要な荷物を駅のコインロッカーに預け、身軽になれば、足取りも軽い。日傘を狙って容赦なく太陽光が攻撃して来るが、那覇に、国際通りにいるという感激が私を支配する。
朝食はお気に入りのjefという名前のファーストフード店で。婚姻届を提出した日(結婚した日)に夫とjefで“ぬーやるバーガー”を食べたことを思い出した。3年前の8月、台風の居座る沖縄へドキドキしながらやって来て、最初に食べたのが、このぬーやるバーガーだった。
jef(http://www.yonabaru.jp/kigyo/jef.htm)は沖縄に5店舗あるファーストフード店で、沖縄独特のメニューを展開している人気店。おじぃやおばぁの姿があることでも有名。
ゴーヤーの卵とじを挟んだゴーヤーバーガーの他に、ポークランチョンミートを加えたぬーやるバーガー、タコミートサンド、ゴーヤーリング(ゴーヤーのフライ)、紅いもパイなど、沖縄らしいメニューはどれもおいしい。
国際通りを端から見ていたのでは、飛行機に乗り遅れてしまうので、市場通りを中心に土産物店を覗きながら夫と自分の土産品を探す。アーケードになっているこの通りは、いつ来ても活気がある。見て歩くだけで十分に楽しいのだが、買わずにはいられない。
サトウキビを目の前で搾り、搾りたてのサトウキビジュースが飲めるスーパー、サトウキビ染めの小物などを販売する雑貨屋、サンゴや貝殻のアクセサリーを中心に扱っている宝石店、島酒である泡盛の専門店、文字入りTシャツやかりゆしウェアを所狭しと掲げている衣料品店、観光客相手の箱入り・ケース入りの土産物を店先に積んでいる土産品店、見た目にも驚かされる珍しいフルーツの数々から甘い香りを漂わせている路地販売、沖縄の伝統的なお菓子を手作りしている菓子屋。
何度来ても飽きない懐かしさが、雑踏の中から立ち上る。販売員の年齢が高いのも、沖縄ならでは。イスに腰かけ、何十年も同じ風景を見続けてきた風格がにじみ出ている人もいる。自分のスタイルで店を守っている店主がほほえましい。
市場通りと言うだけあって、一角に牧志公設市場がある。地元の人のみならず、観光客の姿も多い。一階の店で購入した食材を二階の食堂に持ち込めば、安価な手数料で料理を作ってくれるというサービスもある。なかなか愉快な市場なのだ。
田芋(ターンム)の天ぷらと求めているものがハッキリしていた私は、市場周辺を探し回った。紅いもの天ぷらはあるのだが、田芋の天ぷらはない。生の田芋は機内に持ち込めない。でも、夫に一口食べさせてあげたい。必死に探した結果、天ぷらではなかったが、田芋の大学芋をget。にんまり
夫に島らっきょうと泡盛。その他、いろいろ。次第に抑えが利かなくなってきた。荷物も増えたので、手荷物をまとめるハイビスカス柄の大きなバッグも購入。満足満足。
空の旅
那覇空港へはゆいレールを利用。那覇空港の一つ手前の赤嶺駅は、日本最南端の駅。そして、那覇空港駅は日本最西端の駅。隣同士。果たして、最北端と最東端の駅はどこだろうか。
いつもなのだが、赤嶺駅から那覇空港駅へ向かう時に、空港の奥に見える海の色にうっとりとなる。神秘的な青が細く揺らめいているのだ。帰りたくない気分にさせられてしまう。
搭乗手続きを済ませ、グアナバナというフルーツのトロピカルスムージーを飲みながらホッと一息つく。最終日はいつものごとく、生ものの購入にバタバタと忙しくなるが、搭乗前の一瞬、旅行を振り返る時間が持てる。旅行中の出来事が、走馬灯のように駆け巡る。
復路も窓側の座席。本島が次第に小さくなっていく。サンゴ礁の海は、乗客を窓に張り付かせる。あちこちから、美しい海を称える賛辞が上がる。
伊是名島を上空から発見。往路も復路も見下ろすことができた。伊是名島で出会った人々の顔が浮かぶ。島には今日も強烈な日差しが照りつけていて、歩いている人などいないのだろう。島ルールは大切だ。
奄美の島々の上を通過し、富士山が見えてきた。歌にあるように、頭だけを雲の上に出しているからすぐにわかる。雪は一切ないように見える。富士山も暑いのだろう。
羽田周辺はまずまずの天候のようで、海ほたるのちょうど真ん中を飛び、飛行機は着陸態勢に入った。いくつもの島々を眺めながらの空の旅は快適で、アッという間に帰って来たという感じ。
到着後、空港の展望デッキでしばらく、飛行機の離着陸の光景をぼんやり眺めた。那覇空港の奥に広がっていた海と、今目の前に広がっている羽田空港の奥に見える海はつながっている。地球の裏側ほどの違いがあるように見える。気のせいではなく、空の色も違う。見慣れたグレーの海と空に、一言漏れた。「帰ってきたんだ…」
結婚後、これほどまでに長い期間、夫と離れていたのは初めて。結局、毎日電話で会話をした。携帯電話の請求が怖い。これまでも一人旅をしてきたとは言え、やはり心配だったのだろう。夫には、不憫な思いをさせて悪かったと思う。
今回の旅の目的は、私が元気を取り戻すこと。出かけしな、「元気にならなきゃいけないと思わなくていい。それがプレッシャーになるとよくない」と言って送り出してくれた夫。プレッシャーを感じることもなく、思いっきり主婦業を休み、羽を伸ばし、笑顔も幾分戻って来た感じはする。しばらくは旅行の余韻に浸り、ゆっくりと普段の生活に戻ればいい。
夫とは、羽田空港近くのcity air tarminalで待ち合わせ。那覇空港で受信した「迎えに行きたいんだ」というメールが嬉しかった。
6日ぶりに顔を合わせた夫は、意外に元気そうだった。夫より元気なのは、もちろん私。夫の私に寄越す羨望の眼差しに、心の中で謝罪。この後、夫は、長時間土産話を聞くことになるのだった。
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