最後の訪問となる四校目の小学校は、パソコン室から海が臨める環境にある。休み時間や放課後には、いつも閉まっているカーテンの隙間から、海を眺めていた。そんなリゾート気分いっぱいの小学校とも、今日でお別れ。
私の訪問日にはいつも必ず、2年1組の授業の予定が組まれていた。担任の先生が「私はパソコンがあまりできないから」とおっしゃっていたが、全くできないわけではないことにある日気がついた。職員室にあるパソコンで、文書を作成しておられたから。一人で授業に臨み、トラブルなどがあった場合対応ができないからといった理由で、パソコンを使った授業をしたがらないのかもしれないと思った。その気持ちはわかる。私もトラブルに強くなりたいと、本を買って勉強した時期もあったから。
前回訪問の際、教頭先生から「最後の日は8:20には出勤して、お別れの挨拶をしてほしい」と頼まれていた。挨拶の言葉を考えながら出勤したのだが、全教職員の前では緊張してしまい、考えていた言葉の7割くらいしか言えなかった。続いて校庭で行なわれた朝会での挨拶も同じだった。練習が足りなかったと反省しても、後のまつり。でも精一杯の「ありがとう」を伝えられたので、朝会で紹介してもらってよかった。校長先生や教頭先生のお気遣いに感謝した。
この小学校に通う児童の安全を守るため、「見守り隊」と呼ばれる方々が存在する。朝会で、この見守り隊の方々(28名)の紹介も行なわれた。一人ずつお名前が呼ばれ、拍手が送られる。感謝の手紙の朗読もあった。
私は9時に出勤するのでほとんど会ったことはないのだが、一度だけ8:30に出勤した日に、蛍光色の帽子にジャンパー姿の見守り隊の方に会ったことがあった。見知らぬ私にも大きな声で「おはようございます!」と挨拶をしてくださったことを覚えている。防犯の面でも、このような方々の存在は大きいと思う。子どもたちの安全を町ぐるみで見守っているのは、素晴らしいことだと思う。見習ってほしい地域は多い。
今日もいつものように2年1組の授業をし、続いて3年生二クラスの授業をした。なかなか私語が多い3年のクラスでは、担任より私の方が大声を出していた。
職員会議があるということで、30分退勤時刻が早まってしまった。2年1組の担任が、子どもたちが私宛に書いた手紙の束をくださった。表紙は担任の先生が作成されたらしく、名前と「ありがとうございました」の文字が。こんなふうに作品を作って贈ってくださる先生や子どもたちの気持ちが本当に嬉しい。
教頭先生に玄関まで見送られて、小学校を後にした。校門を出たところで、胸に込み上げてくるものがあり、涙が頬を伝った。四校目にして初めてのことだった。定年退職される方はきっとこんな感じなのだろうか、などと考えながら帰路についた。
月に2回のペースで通ったこの道も、今日で歩くことがなくなるのかと思えば、それだけでぐっとくるものがある。子どもたちの笑顔を次から次へと浮かんでは消えていく。
駅のベンチで子どもたちからの手紙を読んだ。一枚読んだだけで、続きが読めなくなった。こんな感動はいつぶりだろうか?「人は感動の時にのみ、涙をこぼすもの」と言っていた大好きな作家の言葉を思い出した。大切な思い出の品が、また一つ増えた。
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