書籍・雑誌

2010年4月27日 (火)

出版社からの勧誘

公募ガイド関連記事が続くが、記録として残しておこうと思う。

3月下旬に応募したエッセイ。大賞は逃してしまったのだが、その次点である審査員特別賞をもらった。今月8日のこと。気球の写真に引き続き、これも惜しかったな。

採点対象の応募作品は477点(応募点数は倍近くあったらしいのだが、どこかに存在している文章に手を加え応募してきているものも多く、それを除外すると477点になるという)。書評までしてもらい、応募先であるA出版社の企画部担当者から電話までもらった。内容は、実力を把握したいので、もう一つ『わたしのエコライフ』という内容で、1600字以内でひと作品書いてほしいという執筆依頼。

アレルギー性鼻炎でだるい日々が続いていたので、全く書く気はなかった。しかし、担当者から電話で説得され(14日)、今秋発行される書籍に掲載されるかもしれないという下心もあって、何とか書いて送った(21日)。

すると、再度電話があって(26日)、「完成度が高く、本を一冊創作できる人である」という部署内で意見が一致したという理由で、ぜひ本を出版してみないかと勧誘された。この勧誘は、8日届いた結果通知にもあったのだが、その気はなかったので、放っておいたもの。しかし、こんなに何度も電話がかかってくるようでは、嫌でも考えないわけにはいかなくなった。

私自身、文章を作成するのは好きである。苦ではない。ブログが続いているのも、その理由が占める割合は大きいだろう。

ただ、自作の本を出版してみたいとチラリと考えたことはあっても、作家を目指そうと思ったことはない。今回の話は作家への道が約束されているものではないが、出版社との共同出版という形をとるので、多少の自己負担金が必要となる。自己満足で終わるには高額過ぎる金額である。

昨夜、夫に相談したら、「執筆者に費用を負担させるような出版社は止めておいた方がいい」という返答があった。「本当に才能がある人だと思うのであれば、今の今でなくても、こっちが原稿を持って行った時に、向こうから『ぜひ出版させてほしい』と言ってくれるよ。せかしたりはしない」と、彼なりの分析をしてくれた。申し込み期限が今月末までという設定は、私も気になっていた。来月になると、かかる費用が変わるので、今月中に意思表示をしてほしいということなのだ。

「ぴろろさんは1600字という少ない字数でこれだけまとめられる力があるのだから、世間に言いたいことを文章化して伝えることができる人。情報収集力に加え、将来性もある。こちらも商売なので、売れる文章が書ける人にしか声をかけていない」などと褒められ、その気になっていたが、夫の意見に納得したので、出版の話は断ることにした。

自分の名前(ペンネーム)が著者として印刷された書籍が、書店に並ぶことを夢見ている人は多いだろう。私の身近にもいる。現在は、自費出版物でも、キレイに製本された書籍として気軽に刊行できる時代である。自分が書いた書籍を書店で手に取ることは、今や、遠い夢物語ではなくなってきているのかもしれない。

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2010年2月 2日 (火)

公募ガイド

夫がベトナムに住む友人の依頼で、公募ガイドを買って来たのはひと月前。夫の友人はシナリオが書きたいようなので、シナリオ募集のページだけ切り取って、すぐに航空便で送付した。

Photo_2なぜか、夫は今月号も公募ガイドを買って来た。自分が応募するというわけではなく、私のために買って来てくれたようだ。主婦は、暇を持て余しているとでも思ったのか。せっかくの夫の気持ちを無駄にしないよう、ここ数日、公募ガイドをめくる日が続いた。

まずは、簡単に作れる川柳に挑戦。次にエピソード。それから写真。5箇所へ応募した。応募した中には、大賞が旅行券50万円分という賞金のあるコンテストもあった。そんなコンテストは応募者も多数で倍率も高いのだろう。私は賞金目当てではないので、賞金は見ずに、できそうなものをチョイス。もちろん、入選できたら嬉しいけれど…。実際、いい暇つぶしにもなった。何より、楽しかった。

夫は、私が文章を作るのが好きなことを知って、買って来てくれたのだと確信した。決しても、暇つぶしのためだけに買って来てくれたのではない。作家に向いていると言ってくれたこともあった。火をつけようとしているのか。まあ、それも悪くない。もう少し、応募できそうなものを作成して送ってみようと思う。

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2009年10月26日 (月)

人生の幸せ“はひふへほ”

綾小路きみまろ氏の著作物を読んだ。タイトルに興味を持ち、手にとった。笑いあり、涙ありだった。

彼は、60~70代くらいの世代をターゲットにして、漫談をしているようだ。彼の漫談には、「40年前は○○だったのに、今では○○だ」なんて表現が多く出てくる。確かに40年も一緒に暮らしていると、新婚当時とは劇的に変化するのが人間だろう。

どれも大きく頷ける話であったが、その中で、忘れないでおきたいと思った言葉がある。それがタイトルにつけた、人生の幸せ はひふへほだ。綾小路きみまろ氏曰く、「人生欲張りすぎてはいけない」。

【人生の幸せ】
は…半分でいい
ひ…人並みでいい
ふ…普通でいい
へ…平凡でいい
ほ…ほどほどでいい

…『こんな夫婦に誰がした?』
綾小路きみまろ著参照

なるほどと、何回も頷いてしまった。貧乏だから不幸。みんなに愛されていないから不幸。仕事を失ってしまったから不幸。不満を挙げればきりがないが、満ち足りていることは存外忘れがち。最近、幸せ度が低いかなと感じたら、不幸せと感じる内容を数えず、幸せだと感じる内容を数えてみる。意外と出てくるものだ。

何でもないような平凡な生活が、意外と一番幸せなのかもしれない。それに気づいた者が、幸せ者なのだ。きっと。

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2008年10月27日 (月)

読書週間

今日から、読書週間が始まった。読書週間とは、読書を推進する行事が集中して行なわれる期間のことで、10月27日から11月9日までの二週間となっているそうだ(参照:フリー百科事典Wikipedia)。

我が家ではふた月ほど前から、就寝前のひと時を、読書に充てている。夫は毎晩ではないが、私はほぼ毎晩、就寝前に何かしらの本に目を通す。

子どものころから本が大好きで、親からも与えられていたし、自らも時間さえあれば本を手にしていたように思う。定期試験の直前やその最中に、教科書以外の本が無性に読みたくなってしまう病気は、中学時代後半から大学時代まで続いた。

これまでに、何冊の本を読破してきただろうか。一人の人が一生のうちで読める冊数は、多くても約2000冊と言われている。2000冊は果たして多いのだろうか、少ないのだろうか。

我が家の本棚に並んでいる本は様々ジャンルとまでは言えないが、それでも数多くの書籍が、いつ選び出されてもいいように背表紙をこちらに向けて並んでいる。レパートリーを増やそうと買ったレシピ集、一人しんみり紐解こうと思った詩集、何度も繰り返し読んだ旅行エッセイ、折り目やしるしのついたガイドブック、いつか見ようと思ってなぜか封が切れない写真集など。

本との出会いも、また様々だ。図書館で選び出した一期一会の推理小説、旅先で興味を惹かれた県産本、作者から謹呈された自費出版詩集、古本屋で見つけた前から欲しかった廃版となった小説など。

Photo  

 

 

 

 

 

 

 

何度も読み返したくなる本との出会いは、大切にしたいと思う。落ち込んだ日にページをめくりたくなる沖縄の風景を閉じ込めた写真集は大のお気に入り。今日は、いつもより甘く入れたコーヒーを片手に、美しい沖縄の風景で癒されようか。

 

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2008年9月16日 (火)

秋の夜長に

眠りに就く前のほんのひと時。忙しい現代人にとっては、至福の時間かもしれない。

休日の夜、ベッドに入ってからしばし読書タイム。日曜日の夜は、一週間の中で一番静かな夜となるので、読書には最適。ここ二週間、そんな夜の読書にふけっていて、二人とも、翌日やや寝不足気味である。

その時の気分に合わせて、書棚から一冊を選ぶ時の楽しさといったらない。何度も読んでカバーの色が褪せてきている小説もあれば、まだ開封していないピカピカの写真集もある。旅行が好きだから、世界中の世界遺産をテーマにする書籍も数多く並んでいる。旅エッセー集も豊富。

“読書の秋”とはよく言ったものだ。次第に長くなっていく静かな夜には、お気に入りの一冊で眠りに就くのも悪くない。

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2007年12月 7日 (金)

知っていてムダではないものの名前

図書館で借りてきた本の中に興味深い本があった。タイトルは『知ってるようで知らない ものの名前』だ。

私たちが、普段目にしているものや使っているものの中には、知られていない名前を持つものがたくさんある。それらが、その本には納められていた。

Photo_2 例えば、食パンの袋を縛るプラスチック製の平たい留め具。名前なんて考えもしなかったし、あるとも思っていなかった。しかし、これにも正式名称があるというのだ。

「クロージャー」 これが、食パンの袋を留めてある、留め具の正式名称。初めて知った。

Photo_3 それから、クッキーや精密機器などを包んでいるおなじみのエアークッション。子どものころから形を変えることなく、存在している。よくプチプチと、一つずつ潰して遊んだものだ。実は、あれにも正式名称がある。

「気泡緩衝シート」 う~ん、言われてみれば、その役割を如実に表現している名前だ。ただし、「プチプチ」とか「エアキャップ」という名前で登録商標されているものもあるという。この場合は、あくまで特定商品につけられている名前だという。

この本は、一章:日常で用いるモノ、二章:伝統に浸るモノ、三章:趣味を遊ぶモノ、四章:衣を彩るモノ、五章:食を味わうモノ、六章:住にあるモノなら成っている。家の中にあるものから、衣食住に関するもの、日本の伝統的行事に登場する品物などの細かい部位にまで、名前がついていることを知った。「へぇ~」と、驚きの連続であった。

とても興味深い本に、久しぶりに巡り会った。私の中での一番の驚きは、「ホッチキス」の正式名称が「ステープラー」だというものだった。「ホッチキス」と一般的に言われているのは、明治時代に初めて日本に輸入されたのが、ホッチキス社製のものだったからだとか。

ページをめくればめくるほど、驚きが詰まった一冊だった。初冬、暖かい家で寛ぐ時間が長くなってくるこの時季、家族みんなで読むのにお薦めの一冊だ。

 

※正式名称とその解説は、冬幻舎発行『知ってるようで知らない ものの名前』 から引用

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2007年6月15日 (金)

世界の中の日本

数年前に話題になった『世界がもし100人の村だったら』という本を、最近になって読んだ。この本には『世界がもし100人の村だったら②』と『世界がもし100人の村だったら③ たべもの編』、『世界がもし100人の村だったら④ 子ども編』という続編もあり、4冊まとめて読んだ。

ページを繰るたびに、衝撃的な文章に出会う。世界における日本の富裕さが、数字で飛び込んで来た。世界を知ることは日本を、そして自分自身を知ることにつながる。

 

『世界がもし100人の村だったら』より

村人のうち                            
1人が大学の教育を受け
2人がコンピューターを
もっています
けれど、
14人は文字が読めません

 

20人は栄養がじゅうぶんではなく
1人は死にそうなほどです
でも15人は太りすぎです

 

『世界がもし100人の村だったら③ たべもの編』より

日本の国の予算のうち
農業のためにつかわれるのは
4%です
軍事費は
6%です

 

日本の食料自給率は
40%です。わたしたちのからだの
60%は、
よその国の資源をつかって、
よその国の人がつくった
たべものでできています。

 

『世界がもし100人の村だったら④ 子ども編』より

世界の子どもがもし100人だったら
生まれたことが役所などに届けられない子どもは
55人か、あるいはそれ以上です。
(中略)
日本では、100人の子どもすべてが
届けを出されます。

 

読み進めていく手が途中で何度も止まった。次のページをめくるのが怖くなることもしばしば。現実を知れば知るほど、辛い気持ちになった。そして、自分の無知を知った。

子どものころ、「豊かな日本に生まれてよかったね」という言葉を頻繁に聞いた気がする。現状を知らず、言われるがままに「日本に生まれてよかった」と思っていたであろう自分が情けない。人の痛みをわかってあげられない子どもだったのだ。

先進国に生まれたからには、それなりの役割があるのではないかと思う。逆に言えば、だからこそ、先進国に生まれたのかもしれない。途上国と言われる国々に住んでいる、誰かの助けを必要としている人々を救えるのは、そのことを知っている者たちだ。救えるなどとおこがましい言い方は適していないだろう。何と言えばいいのだろう。協力とでも言おうか。語彙が少なく、適切な言葉が浮かばない。

たとえば、早急な対策が必要な「地球温暖化問題」。これはかなり身近な問題である。環境問題に取り組むことは、長い目で見れば、地球全体を考えることにつながる。一人ひとりがゴミを減らす努力をすることで、二酸化炭素が少しずつでも減らせていければ、温暖化に効果があるだろう。自然を破壊せずに、環境に優しいエネルギー源が発見・開発されれば、それも効果的かもしれない。

国連人口推計では、伸びが鈍化してきているとは言え、このまま世界人口は増え続け、ピークに達すると思われる21世紀後半には、世界人口は100億人に達するという。しかし、それだけの人口を養うの耕地面積が地球上にはなく、大きな食糧確保の問題が生じると懸念されている。農地の劣化、砂漠化は食い止められないのだろうか?

非才の私に考えられることには限りがあるが、有識人たちには、地球やそこの暮らす人々全員を守る観点で、様々なことに尽力してほしいと願う。

この本が話題となった時期、内容を重く受け止めた国はあったのだろうか?真剣に、また具体的に改善策に取り組んだ国はあったのだろうか?果たして日本はどうだったのだろうか?「へぇ~、そうなんだ~」で、終わってしまったのだろうか?

話題に上っていた時に興味を示さなかった私が意見するのも矛盾しているが、国単位で動けないのなら、個人でできることから地球のことを考えた取り組みをしていかなければならない時期にきているのだと思う。

まずは、現状を知ることから始めてみるのがいいだろう。そして、一人でも多くの人が、関心を持ち、何らかの行動に移せたら、笑顔が戻る人々が大勢いることだろう。

もっと取り組みの幅を広げていくことを決意した、本との出会いだった。

 

 

 

 

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2007年5月27日 (日)

やっと見つけた!

探していたものがある。しかも、かれこれ20年ほどになる。

夫は寺崎勉氏の『さすらいの野宿ライダーになれる本』をここのところ、ずっと探していた。絶版になっている書籍らしいので、古本屋を見つけては目をさらのようにして探し回っていた。私は私で、中学校時代に巡り会った佐々木丸美氏の本を常に探していた。夫も一緒に探し回ってくれ、5冊見つけてくれた。彼女の本もつい最近まで絶版になっていたので、古本屋でしか入手できないと思っていた。

それが、である。最初に気づいたのは夫だった。毎日インターネットしている私が何故気づかなかったのか、わからない。ぼんやりしている証拠だ。

「インターネット通販で古本は買えないの?」

「!」

買える。買える。店舗まで足を運ばなくても、気軽に、販売されている書籍を探すことができるではないか!その手があったではないか!絶版になった本も、可能性は十分にある。

早速、Amazonで寺崎勉氏と佐々木丸美氏の作品を検索してみた。そしたら、あるはあるは、両氏とも十数冊の書籍が列挙されてきた。笑いが止まらないとはこのことだ。夫は欲しがっていた書籍のタイトルもしっかり確認した。もちろん、私が長年手にしたかった書籍のタイトルも挙がってきた。

食後、夫と二人で再度Amazonのサイトを閲覧。夫が欲しいのは一冊だけかと思いきや、合計7冊にもなった。それでも、高い書籍は諦めた結果だ。私は3冊。やはり高額になっている作品は諦めた。時期をずらせば、また増えているかもしれない。それを期待することにした。

それにしても、今日はいい買い物をした。20年来の探し物が、近々手に入るのだ。よだれが止まらない。楽しみだ。

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2007年4月10日 (火)

オリジナルの住宅ローン

先月契約したマンション。ローンを組むので、その住宅ローンの組む先を検討中。いくつかの都市銀行と地方銀行、労金、JAと様々なところにあたってみた。窓口まで行かずとも対象者の条件から外れてしまう銀行もあったが、JAと都市銀行であるM銀行の人は親切に対応してくれた。

JAについて調べてみたら、地域色が大変濃く、住む予定地域で相談しなければならないことがわかった。農業に携わっていなくてもローンは組めるという。組合員になるには3万円が必要な県もあれば、1万円でいい県もある。保証料が銀行と比べ物にならないくらい高い県(地域)もあった。

短期固定金利が終わった後はその時の金利が適用される県(地域)と、現段階で金利が発表されている県(地域)があるようだ。長期固定金利は組めないが、JAは銀行ほど高金利を設定しないのではないかというのが夫の意見。現時点では、他の銀行や信金などと比べても低金利。JAは侮れないと思う。なのに、JAを利用している人が少なさそうなのはどうしてなのだろう?住宅ローンを考えた時に、すぐに思い浮かばない地味な存在だからだろうか?「銀行と同じ業務をしています」とJAの人は言っていたが…。
とりあえず、今度の日曜日に相談会があるので、必要書類一式持って、相談してもらう予定。

M銀行は長期固定金利と短期固定金利を組み合わせてローンが組めるので、変動金利のリスクが少なくて済む上、短期固定の低金利の恩恵も受けられるという理想のローンがある。

10年後、20年後の金利は読めないのでJAにしようか、M銀行にしようか、この一週間迷いに迷ってきた。本も何冊も読んだ。知識も増えたが、金利の動向だけはわからない。ローン特約が切れないうちに決めないといけない。

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2007年4月 7日 (土)

不思議な山口達也の世界

雨が降る港にその人は佇んでいた。傘も差さずに…。雨に濡れる面積を少しでも狭めようとするかのように、肩をすぼめながら。

偶然にも同じ宿泊先だったその人は、無表情で印象の薄い人だった。連れの男性はとても明るく、いつも笑顔だったから、余計そう思えたのかもしれない。

一人旅だった私は、三日目の晩に彼らと夕食を共にする機会に恵まれた。一人旅も四日目ともなると、誰かと話したくもなってくるものだ。

いつも笑顔の男性は小田と名乗った。港で雨に濡れていた無表情の男性は山口と名乗った。二人の出会いは十数年前、今では大親友ということだった。

夕食は楽しいものだった。お酒も入っているからか、いつも以上に小田氏はよくしゃべった。この旅を心から楽しんでいるようによく笑った。山口氏も何度も頬を緩めていた。第一印象は薄かったが、一緒に食事をしたことで、様々な話をすることができた。彼はとても苦労をしてきている人だということを知った。

山口氏は数年前に『幻』という詩集を自費出版しているという。宿に帰ってから、その『幻』をいただいた。住所とサインがしてあった。「読んだ感想を聞かせてほしい」と言われたので、メールアドレスも聞いた。

自室で『幻』を眺めた。表紙をめくった最初のページにあった種田山頭火の言葉に、思わず詩集を閉じてしまった。今思えば、何かただ事ではない予感がしたのだろう。

『幻』は山口氏の心の叫びが詰まっている詩集だった。彼の人生の縮図が見える気がした。そう簡単に感想を言える代物ではなかった。一つひとつの言葉だけではなく、行間からも彼の悲しみが伝わってくる。まだ30歳の若さで、どんな苦しい人生を歩んできたのか。

山口氏にメールで詩を送った。私も以前は詩をしたためていた時期があった。彼の詩に対する感想でも何でもなかったが、今の私の気持ちを詩にしたためてみた。山口氏からも詩で返信が来た。最後に「あなたも立派な詩人です」とあった。

旅から帰り、山口氏の処女作『異邦人の憂鬱』を購入して読んだ。人の世の儚さ、無情さが綴られていた。どの詩もリズムがあり、見事な詩集だった。

山口氏とは今でもメールのやりとりをする仲である。現在の彼は、ちょうど三年前に出会った時の彼とは別人のようだ。こんなに笑顔が素敵な人だったのかと三年前とは見違えるくらい好青年になった。

今でも世の中に対する虚無感は持っているようだが、生きることに前向きになった彼の姿はとてもまぶしい。

短編詩集 異邦人の憂鬱 Book 短編詩集 異邦人の憂鬱

著者:山口 達也
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