波照間島→石垣島→小浜島
波照間島での滞在は約半日といった感じ。到着は遅かったが、出発は早い。もう少し、島の空気を吸っていたかったというのが本音。
母への絵ハガキは朝食後、超特急で書き上げ、ポストへ投函。夫が泡波の瓶を、丁寧に衣類に包み、リュックへしまっている姿がおかしかった。
次第に天候は回復してきているようで、不快な船の揺れは感じない。波の高さも落ち着いており、海の色も本来の色彩を取り戻しつつある。やはり、太陽の光を受けて輝く大洋は非常に美しい。
今日(4/25)は、小浜島観光の日。波照間島から小浜島へ向かうのだが、直行する船は出ていないので、一旦石垣島まで戻り、再度小浜島へと向かう船に乗船するしかない。波照間島から石垣島へ向かう途中、左手に目的の島が見えて来るのに、遠回りしなければならないのだ。八重山の島々を渡り歩く時は、基本的に石垣島を拠点としなければならないのが、ちょっとばかり面倒な点ではある。
波照間島へ行く時同様、サーターアンタギーやポーポー(沖縄風クレープ)などの沖縄おやつを離島ターミナルで購入し、小浜島へと急ぐ。島の中でおやつを買えるかどうかわからないので、とりあえず休憩用のおやつを購入しておくのがいいだろうと思って。
緑の風を感じる島
小浜島までは25分の船旅。凪いでいる日の乗船は快適。平べったい竹富島を横目に見ながら、NHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』(2001年放送)で注目を集めた小浜島へ。
昼食は、港の前にある結という食堂に決めた。食事を終えて出て来る人が、「ここの食事はどれもおいしいよ」と言って行く。満席の店内に期待は膨らむ。
私は軟骨ソーキそばを、夫はソーミン(ソーメン)チャンプル定食を頼んだ。沖縄料理は種類も豊富で、毎日食べても飽きない。
運ばれて来たソーキそばの上には、 デーンと大きなソーキ(豚のあばら骨)が乗っていた。一口、口に運んだ瞬間、トロッととろけるようなソーキのおいしさが、脳天を直撃。何時間も煮込まれて旨味が凝縮され、軟骨までもがゼラチン質状態になっていた。テビィチのようにコラーゲンたっぷり?
「この店はおいしいよ」と言い残していった先客の言葉に、偽りはなかった。私にしては珍しく、スープまで一滴残らず、飲み干した。夫も「このソーミンチャンプルは絶品」と大満足の様子。
おいしい食事にお腹も心も満足した私たちは、まずは今夜の民宿にチェックインした後、島内巡りをすることに。起伏のある小浜島では、二人乗りが可能なスクーターを予約しておいた。車の免許を持っているとは言え、スクターに乗ったことのない私。二輪の免許を持つ夫の後ろに乗せてもらうため、100ccのスクーターを借りた。一度だけ、夫の250ccのオートバイに乗らせてもらったことがあったが、その時以来のことなので、正直、少し不安もあった。
が、そんな不安は瞬く間に消え失せた。4月の爽快な風に吹かれて、小浜島を駆け抜ける。気持ちがいい!
バイクが趣味である夫は、懐かしい感触に満悦の様子。喜色の表情を浮かべている。そんな夫を見ていると、こっちまで幸せな気持ちになる。
小浜島はサトウキビ畑が随所に広がっている島。前回来た時は、11月末ということもあって、風になびいているサトウキビ畑が印象的だった。しかし、今回は4月という時季の理由だけではなく、サトウキビ畑の衰退を目の当たりにした。
あたかも、以前はサトウキビ畑だったと言わんばかりの跡が残っている空き地が目立つのだ。隅っこに廃車が捨てられていたり、刈り取られたまま、次の苗植えは未定といった様相を呈している畑も多く見られた。土地はあれど、手が足りないといった噂は聞いていたが、その結果なのだろうか。刈り入れ時期には、期間工の若者が日本各地からやって来るようだが、それでもやっていけないのだろうか。沖縄の代表的な製糖が廃れていくのは、残念でならない。
ロケ地巡り
小浜島と聞いてまず思い浮かぶのは『ちゅらさん』だという人も多いのではないだろうか。実家の両親も見ていた番組だ。私も、ビデオを借りて全部観賞し、憧れを抱いていた。もちろん夫とも一緒に見た。『ちゅらさん』は、八重山の太陽(てぃだ)の光が降り注ぐ小浜島で育った主人公が、家族との絆や命の大切さに気づいていく、心温まるドラマ。いつも明るく元気な主人公と小浜島のイメージはピッタリ。
私の希望で、『ちゅらさん』のロケ地巡りをしてみることに。ロケ地巡りというか、小浜島のいいことろを巡ろうとすると、撮影されたところになってしまうだけなのだが…。
最初に訪れたちゅらさん展望台の頂上には、小浜島の形をした“ちゅらさんの碑”なるものが建立されている。ここからは、ドラマの中で重要な役割を果たしている“和也の木”を遠くに眺望することができる。ドラマの中では青々と葉を茂らせていた木も、台風の影響か、枯れているように見えた。
好天なので、さすがに日差しは強いが、さわやかな風が通り過ぎていく。夫がおいしそうにタバコの煙をくゆらす。私はポーポーとさんぴん茶で休憩。
人がほとんどいないので、貸切状態。この上ないリラックスタイム。このままハンモックにでも揺られながらお昼寝ができたら最高かもしれない。『ちゅらさん』のオープニング曲、kiroroの『ベストフレンド』が頭の中で流れていた。
ロケ地巡り再開。主人公の幼少時、父親は民宿を経営。その撮影が行われた民宿には、現在も人が住んでいる。ドラマの中での民宿名こはぐら荘の看板がそのまま残されているのが、ファンとしては嬉しい。
そして、主人公が、ミンサー織のお守りを渡す男の子を送迎した港がある細崎(くばさき)へ。西表島の島影が間近に見える。迫力がある。
ここも吹く風がとても気持ちの良い場所だった。何時間でも海を眺めていられそうなほど、ゆったりとした時間の流れがそこにはあった。キラキラと輝く水平線の先に、本当にニライカナイ(理想郷)が存在しているように思えてくる。
毎日、こんな海を見ながら生活をしていける人々は、幸せだなぁ、なんて考える。念願の沖縄移住の夢を叶えた家族の中には、持病が治った人も多いと聞く。沖縄の大自然がス トレスをなくし、病気平癒へと導いたのだろう。そんなにわかには信じがたい話も、この風景を目前にすると、あり得ない話ではないように思えてくる。人間、笑いや喜びの感情が体内へもたらす影響は大きく、細胞をも元気にするというからだ。
美ら海(ちゅらうみ)の風景に頭がとろけてしまっていたのだろう。ミンサー織の模様が描かれている借りたスクーターの前で写真を撮ろうとして、スクーターの位置を直した時、不安定な位置にかけておいたヘルメットが海へ。スローモーションのようにゆっくり海へと落下していくヘルメットを、なすすべもなく見送ってしまった。
幸いにも落下地点が港の中で、潮の流れが岸壁へ押し戻されるように向かっていたため、苦労せずに拾うことができたが、ヘルメットはビッショリ。あ~ぁ。こんなことも、写真を見れば、大笑いの種だ。
両側をさとうきび畑に囲まれたシュガーロードは、『ちゅらさん』に何度も登場した、真っ直ぐに伸びる一本道。誰がつけたか、ネーミングがいいこと。風が吹くたびにサワサワと葉のこすれ合う音が、南の島を想像させる。ヒーリング効果もバッチリ。
味わい深き小浜島の夜
今夜泊まる民宿は『ちゅらさん』にも出演していたある芸能人のご実家。民宿はお父様が経営されており、 三重から伯母様が民宿のお手伝いに来ていた。伯母様は明るくて楽しい方で、おいしい沖縄料理の夕食で、私たちをもてなしてくれた。
夕食後、自然な成り行きでゆんたくが始まった。宿泊者8名。途中から加わったご主人が三線を弾く小学校教諭を呼び寄せてくれたこともあり、とても賑やかなゆんたくだった。島それぞれ、民宿それぞれで雰囲気の異なるゆんたくだが、どこも温かな人情があることに変わりはない。飲めないはずの泡盛も、ここではおいしくいただくことができた。
ゆんたく後、少し集落内を散策。夜の小浜島は初めて。竹富島と同じオレンジ色の街灯に照らされた集落は、落ち着いたいいムード。どこからともなく、三線の音色が耳に届く。歩も自然とゆっくりになる。こんな夜なら、何度迎えてもいい。いっそのこと、住んでしまおうか。
あふれる自然、美しい海、昔ながらの家並み、のどかな雰囲気…。夫が、「この島はどこからでも海が見える。今まで訪れた離島の中で、小浜島が一番好きかもしれない」とおもむろに言ったのが、心に嬉々の波となって打ち寄せた。
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