新しい離島ターミナル
昨夜(4/21)、少し雨がパラつき始め、嫌な予感がしていたのだが、今朝、それは現実のものとなってしまった。ホテルの窓の外には、できれば外出したくないと思うほど大きさで、雨粒が落ちてきていた。この先の天気が、非常に気になる。
今日は竹富島へ渡る。石垣島から竹富島までは10分の船旅。竹富島では二泊する予定。
噂では聞いていたが、離島ターミナルが新しくなっていた。完成したばかりといった感じで、建材の臭いが漂ってきそうなほどキレイだ。前回(4年半前)来た時、どんなターミナルだったかまでは覚えていない。こんな大きな離島ターミナルはなかったような…。
ターミナル内はゴールデンウィーク前だからか旅行客の姿は少ないが、修学旅行生だろうか、高校生の列は見られた。船を待つ旅行者は、みな、これから訪れる島への期待と雨天の無念さが入り混じった表情を浮かべている。
風があったせいか、竹富島までの高速船は、多少揺れた。横揺れではなく縦にジャンプする感じは、石垣島を往復する高速船の特徴だ。
離島に泊まるなら民宿
今晩・明晩は、【のはら荘】と
いう庭先にブーゲンビリアの花が咲き乱れる民宿に宿を取っている。前回訪れた時に、のはら荘に宿泊すればよかったと後悔したほど、外観が魅力的な民宿だ。
港に迎えに来ていたのは、一年半ほど前に名物おじぃから民宿経営を引き継いだという、おじぃと呼ぶには気が引ける若さの、のはら荘のご主人。日に焼けた素肌がまぶしい。気さくな人柄に、すぐに打ち解けることができた。
宿に到着。昨夜の宿泊客が、雨の竹富島での過ごし方はこうだと言わんばかりに、庭先のゆんたく(おしゃべり)場所でカードゲームや知恵の輪に興じていた。みな、私たちに「こんにちは」と声をかけてくれた。突然の声かけに、照れくさいような嬉しいような…。今夜、宿で行われるであろうゆんたくに期待が弾む。
早速、夫と竹富島観光開始。宿の自転車で、港近くにあるゆがふ館に行ってみることに。でも、雨は止まず…。傘を差しながらの自転車運転は違法行為だっただろうか。初めてなので、うまく自転車が漕げない。風に傘が煽られるたびに、自転車を一旦停止。こんな運転はやはりしない方がいいことが身にしみてわかった。バチが当たったのか、ピアスを片方なくしてしまった。一番最初に買ったピアスだっただけにガックリ。
ゆがふ館は八重山初心者にはいい情報発信源となる場所だった。離島病・沖縄病を発症し、何度か沖縄に足を運んでいる者にとっては、10分もあれば十分。ピアスをなくしたショックもあり、サラッと見ただけで集落に戻ることに。
竹富島には、車エビの養殖場があり、全国20箇所の市場に出荷しているそうだ。竹富産の車エビを食すため、車エビの入った野菜そばが人気のやらぼという食堂に入った。
店内は雨漏りがしていて、ちょっとビックリしたが、気を取り直して、一番人気のエビ入り野菜そばを注文。車エビが6匹も入っている。材料費の高騰により…ということで、価格がガイドブックに記載されている価格より300円増しの1500円になっていた。物価高騰の波が押し寄せているのは、のどかな南の島も同じようだ。
夫は、運ばれてきたそばを見て、肩を落とした。エビ入りのエビを、エビ天と間違えたのだそうだ。殻付きの車エビが乗ってくるとは想像していなかったようで、ブツブツ言いながら殻をむいていた。食べるまでに時間がかかる料理は嫌いなんだとか。そうか、覚えておこう。
雨の竹富島
雨が止んだので、昼食後は、集落を散策してみることに。実際、訪れてみないとわからないことは多いものだが、この降雨により知ったことが一つあった。
なんと、この島の水溜りは白いのだ。島の集落の道に敷かれている真っ白いサンゴの色を反映しているからだろうか。サンゴで雨水が白濁するのだろうか。考えたこともなかったが、雨がもたらしてくれた素敵な光景。こんなことにすら感動してしまう、今の私。離島病、再発しそう。
竹富島に流れる時間は、都会のそれとは確実に違う。止まってしまっているのではないかと疑いたくなるほど、何もかもが、ゆったりのんびりしているのだ。動きの早いものが目に写らない。自然と歩がのろくなる。
竹富島の目玉観光の一つに、
水牛車がある。水牛が引くどの牛車にも、大勢の観光客が乗っている。ツアーに組み込まれているのだろう。団体でやって来る観光客は、石垣島からサーッとやって来て、サーッと帰って行ってしまう。竹富島の良さは、宿泊してみなければわからないというのに。忙しい現代人、仕方のないことかもしれないが、ここまで来ていてもったいないと、ついつい思ってしまう。
私たちはというと、そんな忙しそうな観光客を尻目に、のんびりとアイスキャンディーを舐めながら、島で唯一の駄菓子屋だという店先のベンチで一休み。雨上がりのひんやりとした空気が、肌に心地良い。
集落の散策はやはり徒歩が一番。赤瓦の民家の屋根の上には、様々な表情・格好をしたシーサー(守り神)が鎮座している。一軒一軒違うシーサーを見て歩くだけでも十分に楽しい(シーサーの写真はサイドバーに)。
今夜の宿泊者は全部で14名。全員が集まってから食事開始となる。八重山そばに黒米ご飯、お刺身、ポークソテーなどの夕食の最中に、宿のご主人が「夕日がキレイに見えてきたよ」と教えてくれた。さっきまで、厚い雲に覆われていたから、今日の夕日はお預けだと覚悟していたのだが、期待できそうな雰囲気に。太陽が沈まないうちに西桟橋へ向かうため、みな、夕食を急いで胃袋に納めた。
のはら荘は、夕日がキレイに見えることで有名な西桟橋に、一番近い民宿である。西桟橋にはちらほらと人が集まり始めていた。今日の終わりを告げながら、夕日は西表島へと隠れていく。沈みかけた夕日の落ちる速度は非常に速い。まばたきするのもためらわれるほどだ。
民宿の良さを知るゆんたく
八重山の民宿独特のゆんたくは、夜に開催される。のはら荘でも、もちろん毎晩開催されているようだ。
ゆんたくとはおしゃ
べりといった意味。夜、宿泊者全員が集まって、泡盛で乾杯しながら、おしゃべりしたり、三線(さんしん)を奏でたりする。最後は、決まってカチャーシーという沖縄の踊りを舞ってお開きとなる。民宿ごとに多少趣が違うものの、宿のご主人と旅人同士が語らいの場を設けるのはどこも同じだろう。どこの民宿でも、夕食後はゆんたくで賑やかになる。この時が、まさに、旅人同士が仲良くなるチャンスなのだ。
のはら荘の中庭に宿泊者全員が集い、ゆんたく開始。80歳を超える宿のおじぃが、まずは挨拶&自己紹介。そして、宿泊者も順番に自己紹介。
全員、初めて会った人たちなのに、そう思えないのはどうしてだろう。こんなに大勢で集まっていても、緊張するどころか、気持ちがいいのだ。居心地がいいというか…。この島には、そういった不思議な空気が流れているのだ。それは竹富島へ来てみなければわからない感覚。泊まってみなければわからない心情の一つ。
現在ののはら荘のご主人の三線による伴奏で、全員で賑やかに沖縄民謡を唄う。知っている曲もあれば知らない曲もある。歌詞カードが用意されているので、知らない曲でもすぐに唄えるようになるところがすごい。
曲の中に『てぃんさぐぬ花』があった。すっかり歌詞の意味を忘れていた。私の最初の訪沖は高校の修学旅行の時。その時に、この唄の歌詞を国語の授業で勉強したはずなのに…。ご主人が意味を教えてくれた。みるみるうちに視界がぼやけていき、唄えなくなった。父の顔がまぶたに浮かんだ。
一 てぃんさぐぬ花や
爪先(ちみさち)に染(す)みてぃ
親(うや)ぬゆし言(ぐとぅ)や
肝(ちむ)にすみり
(訳:てぃんさぐぬ花(鳳仙花)は、魔除けとして爪先に染めて、親の教えは心に染めなさい)
二 夜走(ゆるは)らす船(ふに)や
にぬふぁ星(ぶし)目当(みあ)てぃ
我(わ)ん生(な)ちぇる親(うや)や
我(わ)んどぅ目当(みあ)てぃ
(訳:夜走る船は北極星を見ている。同じように、親はいつでも私の生き方を見ている)
三 天ぬ群星や
読みば読まりしが
親ぬゆし言や
読みやならん
(訳:天空の星は数えられるかもしれないが、親の言葉は計り知れないほど大きい)
沖縄民謡には、人々の熱い心とともに人情あふれる教えも唄われている。心地良い三線の音色と歌詞がマッチして、私の精神を揺さぶった。ここへ来て、この島へ来て、本当に良かったと思った。
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