マンションを訪れた父の感想

両親がマンションに来た。母は引っ越しの手伝いや業者対応などに来てくれたことがあるが、父は初めて。娘夫婦がどんな街、どんなマンションに住んでいるのか知ってほしくて、早く来てほしいとは思っていた。やっと念願が叶った。

ダイニングテーブルの一番窓に近い席に腰を下ろした父は、開け放したリビングダイニングと和室の窓から見える海を望みながら「いい景色だなぁ」と感想を口にした。めっきり涼しくなったので、リビングダイニングに入ってくる風も心地良い。

母が作ってきた手料理を食べながら両親と水入らずの時間を過ごした。父は「お父さんもマンション買おうかな」と言い出し、母をハラハラさせた。そんな発言が飛び出すくらい、父は娘の住むマンションを気に入ってくれた。アパートに住んでいた時より、若干実家から遠くなってしまったことを懸念していた。それを差し引いても喜んでくれているようで、私もとても嬉しかった。父は食事しながらも、大小の船舶の航行する様子を目を細めて飽きもせず、ずっと眺めていた。

両親と食事をする機会も減ってしまったが、たまにはこんなふうに両親と食事したり、買い物などに行ったりしたいものだ。何が親孝行なのかはそれぞれの家庭で違うと思うのだが、腰の手術をして思うように歩行できない父のことを考えたら、温泉や旅行に誘うより、顔を見せたり、我が家に来てもらうのが一番いいような気がする。そんなことを考えた日だった。